磁力をつかったシリンダー

磁力を使ったシリンダーの仕組みとデメリット

鍵はもともとピンとバネを内蔵しているピンシリンダーやMIWAロック独自のタンブラーとバネを内蔵したディスクシリンダーが国内の住宅に普及していました。

しかし、そのピンシリンダーやディスクシリンダーの構造を熟知した窃盗犯によって、「ピッキング」という手口によってたくさんの被害が出たのです。

そこでディスクシリンダーを製造していたMIWAロックが、新たな鍵として製造したのが磁力とピンシリンダー構造を採用したマグネットシリンダーです。

広く普及したシリンダーに、ECシリンダーがあります。これは現在廃盤となっていますが、普及率が高かったため合鍵の注文など需要はまだまだあります。

磁力を使ったシリンダーの仕組み

ECシリンダーの鍵は表面にディンプルのくぼみがあり、側面の片側7つずつマグネットが埋め込まれる用に穴が開いています。
その7つの穴すべてにマグネットが入っているわけではなく、ダミーとしてプラスチック製の物も含まれています。

シリンダーの中には、鍵と同じくマグネットが内蔵されていますが、密閉空間の片側7つずつに収まっています。こちらもすべてにマグネットが入っているわけではなく、片側3つずつがマグネット、残りは何も入っていません。

正しい鍵を入れると鍵の中に埋め込まれたマグネットと、シリンダー内のマグネットタンブラーが反発し、シリンダーが回るライン上に障壁となる物がなくなり鍵が回ります。

違う鍵を入れた場合、マグネットが反応しないか、マグネット同士が吸着し、ライン上にタンブラーが残ってしまい鍵が回りません。

この磁力だけの鍵違い数は6,272通りあり、その上密閉空間にあるマグネットタンブラーは外から工具で押さえて開けるピッキング行為も出来ないことから不正解錠に強い鍵として登場しました。

マグネットだけでは不正解錠される

最初に登場した76ECシリンダーはピッキング出来ない鍵として普及したものの、やがて窃盗犯の技術が追い付いてしまい、専用の道具で磁石を合わせられるようになりました。

そこで対策として、マグネット+ディンプルキー仕様を強化。76ECシリンダーではディンプルが1つであったものの、それ以降のXEC型(83EC・E6)ではディンプルの数を4~6個所に増やすことで、磁力を解読したところでピッキングができない構造となりました。

合鍵の作り方

合鍵を作る際には、鍵の中にマグネットを仕込むため、対応できる店舗が限られます。またその場で削れるディスクシリンダー(ギザギザした鍵)とは違いひと手間かかるため、料金は少々高くなります。近くに対応している店舗がない場合、インターネットでも合鍵作成が受付されています。

現在はECシリンダーはすべて製造終了となり新しく取り付けることはできませんが、合鍵の作製はまだ受付されています。

ECシリンダーのデメリット

ピッキングが出来たとしてもマグネットタンブラーが反応しないため、不正解錠に強かったECシリンダーですが、解錠道具としてマグネット対応の工具が作られたため、完全にピッキングできない物ではなくなりました。

またピッキングは難しいとしても、ECシリンダー用の破壊工具(ホールソー)が作られたため破壊にも弱くなっています。

その他にも、磁力は使用とともに弱まり、内蔵されているマグネットタンブラーが脱落し、鍵が開けられなくなるトラブルが急増しています。

こうしたことから現在は廃盤品となっています。また現在も使われている方がいたら、開かなくなってしまう前に交換したほうが良いでしょう。

まとめ

かつてはピッキングにも強い鍵として、マンションや公団住宅などでも普及していました。しかし不正解錠に弱くなったことと、最大の強みであった磁力も時と共に弱まってしまうデメリットがあるため、早めに交換したほうがいい鍵です。